ぐだぐだキューバ旅 〜食べ踊り喋り続けた日々〜

ガイドブックもネットもなし、19日間キューバをほっつき歩いたぐだぐだ日記

シエンフエゴスの3軒のカサ

シエンフエゴスは大好きになった。そこまで観光客も多くなく、静かで落ち着く街だ。人々は親切でフレンドリー、誰とでも会話が弾む。滞在していた間は毎日夕立があり、虹が出た。そして何より素晴らしかったのが、泊まった3つのカサだ。それぞれ個性が違うが、どれも素敵だった。もし、もう一度この街を訪れる機会があれば、絶対同じカサに泊まりたい、と思う。

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毎日夕立と虹。道がわかりやすく、誰とでも会話が弾むシエンフエゴスの街歩きは、キューバで最も楽しかった。

 

12/26

1泊目のカサ Molina House

バスターミナルから、地図を見ながら予約していたカサにたどり着く。と言っても徒歩5分もかからない。外観が特徴的なので、ほとんど迷わず特定できた。ベルを鳴らすとラウルの奥さんが出迎えてくれる。部屋に入れてもらうと、広くてバスルームも綺麗で快適そうだ。昨日までいた湿っぽいハバナのカサよりずっといい。外観も美しい家だ。夕食の時間を決め、それまで海岸へ夕陽を見に行く。雨が降ったり止んだりで、虹も出る。シエンフエゴスは美しい。やはりハバナみたいな大きな街より、こういうこじんまりとした街が好きだ。

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シエンフエゴスは夕暮れ時が特に美しかった。

 

戻ると、ご主人のラウルとも対面。カサの夕食は、こちらの希望を色々聞いて作ってくれた。ハバナでの食事に比べると、とてつもなく豪華に感じられた。魚とポテトフライ、ピラフ、サラダ、ビスケット、フルーツジュース、どれもこれも美味しく相当な量を全て平らげた。最後にアイスクリームまで出してくれ、大満足だった。キューバ滞在中9つの宿に止まったが、ここの食事のクオリティーが最高だったように思う。そういえば、この3日後に泊まるカサの奥さんとは友人同士らしい。既にすっかり情報が行き渡っており、同じブロックですぐそこだから、と笑っていた。

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素晴らしかった夕食。このあとピラフ、フルーツジュース、アイスクリームなども登場する。

 

12/27

かなり良く寝て10時過ぎに朝食。ここのカサは食事が本当に最高。朝食もたっぷり、しかも美味しい。ほぼ全てを食べ切った結果、昼食はいらなくなった。このカサでは小鳥がたくさん飼われている。そして庭の木々に囲まれているので、森の中で過ごしているような気分になる。宿泊者の要望はよく聞いてくれるが、ホストのおもてなしは控えめで、その辺りのバランスが大変心地良い。誰が泊まっても満足できるカサだ。ここのカサを日本で宣伝して、とカサカードを貰う。Airbnbにレファレンスを書いて、と頼まれたので、そちらももちろんと約束する。まだカサ経営を始めてそれ程経ってはいない様子。でもこの感じ、人気カサになっていくのじゃないかな。支払いは朝食と夕食で12cuc。質と量を考えるとかなり安い。

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文句のつけようのない素晴らしすぎる朝食。

2泊目のカサ La Perla del Sur

ラウルのカサに預けておいた荷物を夕方取りに行き、この日のカサへ行く。ごく近所なので3分で着く。カサの名はシエンフエゴスの異名、「南の真珠」だ。ここは1階の1部屋がカサとして使われており、2階は最大4人まで入れるアパートになっているとのこと。ホストはアレハンドロ。キューバでは珍しい堪能な英語を話す。到着するとコーヒーを勧められるが、とにかくシャワーだと言って水を浴び、しばらく休む。庭にはバナナ、コーヒー、ほうれん草など、ジャングルと家庭菜園が混じったような、とんでもなく手の込んだ庭が広がる。この庭を見てみたくて予約したのだ。2人のミュージシャンが庭で歌を作っていた。1人はアレハンドロの息子で、アメリカから帰省中だそうな。

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アレハンドロはいつも葉巻を吸っている。欲しければ無料でくれる。たぶんいくらでも。

 

夕食は肉料理しか出せないらしいので、外へ食べに行く。料理は不味くなかったが、コーヒーの氷が異常に不純物だらけだった。妙な味がし、当然のように腹痛に襲われた。

カサに戻ると他の住人が夕食を食べていて、どうやら誰かの誕生日らしく、一緒にどうかと誘われる。しかしお腹も壊し、炎天下を一日中歩き続けた疲れもあって、もう気力がない。この暑さは夏並みだとアレハンドロも言っていたくらいだから、相当暑いんだろう。残念ながらそのまま寝てしまう。

 

シエンフエゴスは格子状の道なので、夜でもほとんど迷わない。かなり暗いが治安が良いし、アレハンドロも夜を楽しんでおいでと言っていたくらいだから、危険はないんだろう。子供達も外で遊んでいるし、相変わらずキューバ人も話しかけてくる。蹟かないようにさえ注意すれば、一人歩きは平気だ。

 

12/28

カサの庭を前にして、アレハンドロが庭で育てているフルーツや、そこで収穫したコーヒーを頂く。これだけ自給してしまうのはすごい。相当に自慢の庭らしく、植わっている作物を色々説明してくれる。祖父の代から受け継ぐ庭だそうで、誇らしげだ。いつも葉巻を吸っていて、勧めてくる。

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大好きなSilvio Rodríguez の曲を聴かせてもらう。

朝食後ギターを聴かせてもらう。知ってる曲だなと思ったら、やはSilvio Rodríguezの曲だ。キューバのシンガーソングライターで、ギターの腕前も素晴らしいミュージシャンだ。彼の音楽がキューバへ来るきっかけのひとつだった。ちょっと教えてくれないかと頼むが、1日じゃ無理だよと笑われる。ここのカサは独特だ。あまりキューバっぽさは感じないが、アーティスティックでクールだ。人気で予約が取りにくいのも頷ける。支払いは朝食5cuc。

名残惜しなあ、と言いつつアレハンドロのカサを出て、今日のカサに向かう。徒歩3分ほど。

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アレハンドロによると、壁の絵は友人の有名な画家のもので、コーヒーで描かれているという。この絵は高かったんだそうな。泊まった寝室にも同じ画家の別の作品が飾られていた。アレハンドロのカサはクールな感じで、キューバのくどさが苦手な人でも居心地よし。

 

3泊目のカサ Hostal Cuartero

到着すると玄関前でばったり会ったのがバロディア。彼女に会った瞬間大好きになる。まさにキューバのお母さんだ。前々日泊まったラウルのカサの奥さんと仲良しらしく、既に私のことを何でも知っていた。夕食に魚ベジタリアン料理を作ってくれるからと約束してくれた。

 

彼女は日本が大好き。話し始め数分で広島と長崎の原爆の話になったので、ちょっとびっくりした。結構な数の様々な国の人と会話をしていると思うが、これは初めてだ。戦争でアメリカに敗れた日本が立ち直った力強さをひたすら讃えてくれる。キューバはひたすらアメリカに苦しめられてきた歴史だものなあ。そして日本製品をベタ褒めし、部屋のエアコンも日本製なのよ、と誇らしそう。日本に詳しいので日本人が多く来ているカサなのかと思いきや、私が初めての日本人だそうで、最初の日本人だと言って感激してくれた。これは嬉しい。

 

ロディアは船に乗って対岸へ行くツアーがあり、お城やフラミンゴや植物園なんかが見られるんだけど、今から行くにはちょっと遅すぎる、と残念そうに言う。私はキューバの歴史に興味があり博物館に行きたいというと、シエンフエゴスの歴史を語ってくれた。彼女は何でもかなり物知りだ。博物館には1957年9月5日に起きた、シエンフエゴスでの反乱に関する資料が展示されているという。この日は博物館とバロディアのお母さんお勧めの墓地へ行くことにした。(博物館は非常に良かったので、別にページを作った)

 

夕方、ロディアのカサにくたびれ果てて辿り着くと、ちょうど玄関前で会い、そのまま今日行った博物館の話をする。キューバの歴史は本当に興味深い、と言うと、歴史が専門なのかと聞かれ、音楽だというとそのままサルサの話になり、すかさず教えてもらうことにする。バロディアが音楽をかけ、ステップを真似て覚える。職業柄リズムを取ることには絶対的な自信があるので、バロディアもすごい、日本人が踊れるなんて思わなかった、と褒めまくってくれる。調子に乗って踊り続ける。バロディアのお母さんも楽しそうに見ていた。キューバ旅で最も思い出に残る時間だった。

 

明日から行くトリニダーでは12/31に踊りまくるらしい。楽しみだ。そしてトリニダーの後行く場所はまだ決めてないと言うと、プラヤヒロンが絶対いい、友人の素晴らしいカサを紹介するから、と、この旅で既に何度も貰っているカサカードをくれた。

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ロディアのカサは大人気で予約が取りにくい。

シャワーを浴びると美味しい夕食の時間。バロディアのカサは部屋の配置なども機能的で使いやすいのだが、食事も大量に出してくれ最高。レストランの食事より余程美味しい。バロディアとはお喋りが弾み過ぎて写真を撮ることを忘れていた。一晩しか泊まれないのが寂しい限り。部屋もファンが2つ、エアコン一つ、広いし使いやすいし、鍵もあり、完璧なカサだ。日本から持ち込んだお菓子をバロディアにあげることにする。キューバの食事は美味しくないと言われ、2袋持って来たけど、カサの食事は美味しいし大量だし、これ以上持っていても食べる機会はないだろう。それに暑過ぎて、フルーツをひたすら食べたくなる。

 

12/29

種類豊富な大量の朝食を頂く。美味しいなあ〜。食べるのが大好きだと言うと、たくさん食べる人が私も大好きよ、と言ってくれる。食べながら、プラヤヒロンの情報を教えてくれる。私がキューバの歴史に興味を持っているのを知って、そこにも博物館があると勧めてくれる。

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ロディアのカサでも朝食が素晴らしい。3人分の量は出してくれる。

 

朝食後、Viazul に先にチケットへ交換に行く。既に旅行者の列ができているが、並んでいる人に聞くと開いてないとのこと。abierto の文字がかかっているのに。程なく開いたが、そこからが長かった。予約表を見せ発券してもらうだけなのに、15分とか10分とかかかる。機械が故障してるのかと思いきや、中に入って謎が解ける。担当の女性、プライベートの会話をタラタラしながら、とんでもなくだらしない感じで、キーボードで遊んでいるかのように打ち込んでいるのだ。隣に入ってきた係員に、急いでいるんだけど、と言うと、彼女に言って、と。ほとんど遊びながら仕事をしているキューバの人々を羨ましく眺めていたが、これはたまらない。思わず後続の旅行者に状況説明して忠告してしまった。他の乗客、間に合うように発券して貰えたのかどうか。あのスピードだったら危ないな。

 

カサに戻るとバロディアに支払い。あれだけ食べて12cucの食事代。お釣りが無く、わざわざ両替に行ってくれた。日本から持ち込んだお菓子をバロディアにあげると、孫にあげると喜んでいた。そして私が初めての日本人客だから、宿帳にメッセージ書いて欲しいと頼まれる。ありったけの感謝を込めて、スペイン語と、いつか見てくれるかもしれない日本人旅行者向けに日本語でも書く。シエンフエゴスでは日本人旅行者は見当たらなかった。日本が好きなバロディアの初めての日本人客になれて、なんだか誇らしい。

 

ロディアは私がベットの横に置いた手紙を、私が出発する前に見つけてしまった。思いっきりの抱擁でお別れ、外でバロディアのお母さんと近所の人とも挨拶し、さようならだ。バロディアは色々忠告してくれた。ハバナでは騙そうとする人がたくさんいるから、その辺で声をかけて来る人を信用しちゃいけない、両替も絶対だめ、首都は人間が違うから、と。そしてトリニダーも観光地だからシエンフエゴスより何でも高い、カサの食事や買物も必ず値段を確認してからね、と。バロディアのことは忘れられない。

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ロディアの人柄はすべてを包み込む。スペイン語を知らなくてもたぶん楽しめるはず。